佐々木敏彦
大高の家
二つのコートを組み込んだ土間の家
(木造)
施工 有限会社 松井住宅
建築業に携わる施主が比較的多いのは私の小さな自慢の一つである。
施主のKさんは建築材料関係の仕事をしており、現場のこと、職人のことにも詳しい。豪華でなくても建設に関わる皆の、気持ちのこもった家づくりをしたいと訪ねてこられた。私にとっては願ってもない申し出である。コンビニエントな家づくりが幅を利かす時代にあって、オリジナルな家づくりを目指すにはこうした独自の視点が必要である。
敷地は名古屋市南部の丘陵地を開発した新興住宅地の一角である。周辺は真新しい住宅が建ち並ぶが、一部には耕作中の畑もあり、少し離れた場所に残る雑木林がかつての風景を思い起こさせる。南側道路に面する土地の大半は駐車場にということもあり宅地は東西に長い旗竿敷地となっている。平屋建てを理想とする施主の要望を受けて、居間を中心に東西に長いシンプルな平面計画を基本とし、浴室水廻り南側、玄関室北側に四畳半大の2つのCOURTを取り込むことにより、光と風を取り入れるだけでなく、半屋外的生活空間として広がりのあるライフスタイルをイメージした。建物南側全面には深い庇を配した。この深い軒下空間は夏・冬の太陽光をコントロールすると同時に、半屋外空間として室内から屋外へのスムーズで活動的な日常生活を実現する為の大切な場所である。
夏場の輻射熱対策として外壁・屋根は通気工法としている。また蓄熱式床暖房の効率をあげる為、主要な部屋は石貼りによる土間空間とした。これは建築に詳しい施主の、可能であれば土間の家をつくりたいという思いが合致したことによる。昔どこかで目にした清家清の自邸を印象深く覚えてらしたようだ。
晴れた日には、深い庇の縁側には洗濯物が一列に干される。陽光をたっぷり浴びている洗濯物は見ていても気持ちの良いものである。「たくさんの洗濯物を一列にたくさん干せる家がほしかった」とは奥様の弁。洗濯物をできるだけ隠したいという風潮がある中、あたり前に洗濯物が干されている風景は悪くないものである。