佐々木敏彦
桂艮の家
オーバーハングする家
(木造一部Sにて補強)
施工 株式会社 ツキデ工務店
桂艮(うしとら)は町名である。文字通り京都「桂離宮」の艮(北東)方向にある。
角地という計画上のアドバンテージはあるものの、厳しい法規制に加え京都独自の形態・意匠制限もあるコンパクト(≒10m×≒9m)な敷地である。
駐車場(1台+α)を確保しながらも、如何にゆったりとしたファミリールームを確保するかということが大きな目標である。敷地内に1台+α(客用)の駐車スペースを確保すると、北側斜線の制限も厳しく、自ずと1階の床面積は限定的なものとなる。さまざまなシミュレーションと打ち合わせを経て採用した計画の柱は大きく分けると次の3点である。
1. 1階に寝室・水廻り、2階にリビング・ダイニングという逆転プランとすること。
2. 縁側を兼ねた駐車スペース上部に2階フロアーを大きく跳ねだし、可能な限りの床面積を確保すること。
3. 子どもスペースは最小限に抑え、ファミリールーム優先のプランとすること。
2階南側を駐車スペース上部に大きくせり出させることが、広々としたファミリールームを確保するための必須条件となったが、木造在来構法であること、南側なのでできる限り壁を配せず透明感のある開口部としたいこともあり、天秤梁と上部登梁でこれを支える構法とした。天秤梁は部分的にスチールで補強してある。
せり出した部分の両端には小さいながらも屋外テラスを配した。このテラスは物干し場としてだけでなく、ちょっとした屋外ダイニングにもなる。
高密度な住宅地にあっても、視線の抜ける2階ファミリールームからは、周辺に一部残る田んぼをチラリと眺めることができる。また屋根上のデッキ〔しらふの大人専用。酔っ払いは立ち入り禁止(笑)〕に上がると360度の視界が開ける。とりわけ晴れた日、遠くに連なる山々は美しい。
共働きの施主ご夫妻は、現在子育て(二人の男の子)真っ只中にある。小さな家ながら広々としたファミリールームを手に入れ、今後の大きな暮らしの実現が楽しみである。