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窯町の家

陶芸工房兼住居

(木造)

施工   直営

地名のとおり古くから陶芸の工房や工場が集まっていた地域である。

 

施主のOさんは私の古い友人である。現在は陶芸家として忙しくしているが、若いころは建築設計の実務をこなしていた時期もある。そのことを知っている私は、「サポートはするので、やれるところまで自分で設計してみたら。」と勧めたが、さすがに長いブランクがあるので無理、ということで私が手がけることになった。

 

土地選定(中古住宅や閉鎖した工場も含め)にも立ち会った結果、現在の場所に落ち着いた。敷地内には高低差2m程度の古い間知石擁壁が横切り、上下二段の敷地形状となっている。以前はここも、この間知石をまたぐ格好で陶芸工場が立っていた様である。一通り整地はされているものの、一部レンガ蔵の煙突の名残や焼物のかけらも散らばっていた。建設に使えそうなものは土工事の際に取り置き再利用することとした。(ダイニングスペース床はこの古レンガを施主自ら敷きこんだものである。)

 

限られた予算の中で、居住スペース・アトリエ・ギャラリー・窯場を盛り込むために、施主参加も含め施工体制にも工夫を凝らしなんとか竣工にこぎつけた。

住まいを快適にするには屋外空間の充実は欠かせない要素だが、Oさんは独自の世界観による野生の庭を夢見ている。広い外部空間は現時点で最小限の樹木が植えられた。樹木の成長を今しばらく待つと共にOさんの日常的庭とのかかわりが期待される。

 

すまいは竣工時が一番美しいのではなく、日常生活の営みを通して、時間と共にすこしづつ成長していくもので良いのだ。

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