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南山の家

風の通る中庭を持った住まい

RC造+木造

施工 誠和建設株式会社

歯科診療所を併設した住宅である。敷地は比較的交通量の多い南側通りに面しており、間口12m強、奥行き約25mの南北に長い敷地。道路との高低差はmaxで2.5mある緩斜面地である。

長年、中心市街地のRC住宅で暮らしてきた施主は、良好な周辺環境と柔らかく肌触りの良い住いを求めてこの場所に移り住むことを決断した。

 

計画の目標は以下のとおりである。

1 緩斜面地である敷地に沿った低層の建物とするが、歯科診療所が併設されることもあり、存在感を持ちながらも、周辺景観の創造に寄与する構えとする。

2 計画の中心は住居である。風通しの良い、柔らかい光で溢れる、肌触りの良い落ち着いた住いをつくる。と同時に前面道路向かいに建つマンションからの見下ろしからプライバシーを確保する構えとする。

→通常コートハウスは光を取り込んだり、プライバシーを保つには有効であるが、最大の弱点は四方を壁で囲まれた中庭は風の通りがよくないとことである。風が淀むと植栽には致命的である。今回は敷地高低差を利用し、ドライエリアを介して自然に外気が中庭に入り込むよう計画し、この弱点を克服した。竣工後一年経つが中庭の植栽の生育は非常に良好である。

3 地域の建築生産技術・材料を可能な限り取り込む。

  →人の手が加えられることで価値を増す自然素材を中心に建築することは基本である。木工事はプレカットに頼らず全てを手加工で納めることにはじまり、内部珪藻土による壁・天井一体のボールト天井も左官屋との打ち合わせを重ねジョイントレスで処理することが出来た。様々な職人との現場での密なやり取りを重ねる一方で、設計段階から小さな工場を訪ね、オリジナルの材料開発も試みた。外部からつづく玄関アプローチのペーブメントとして使用した50mmのキューブ状のピンコロ、中庭外壁に使用した50mm角のレンガタイルは小さな焼き物工場との連携による。コンクリートやブロックで作るとどうしてもボッテリとごつい物になってしまう花壇には、鉄塔工場の技術を使い、亜鉛めっきリン酸処理したスチールプランターを製作した。

 

計画から2年を経て、「南山の家」は無事竣工した。竣工後、建設に携わった職人はじめ建設関係者の多くが、自ら建設したボールト天井のリビングで美味しい料理とお酒をいただく機会に恵まれ、楽しい会話と共に至福の時間を過ごすことが出来た。

常々建築の良し悪しは、規模や予算では決まらないと自認しているが、この長い期間、我々

設計者のみならず、現場監督はじめ関係者全てが緊張感を持ち続け、前向きに取り組めた

プロジェクトという印象が強い。

施主は忙しい中、毎週お茶菓子を持って現場まで足を運ばれ、進捗を楽しみながら監督や

職人と談笑されていたことも記憶に新しい。

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