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西尾の家

田園のガレージハウス

RC+木造

施工  水野工務店

愛知県西尾市のハズレ、田園の中に建つガレージハウスである。恵那石を敷きこんだ中庭を挟んで、6×6mのガレージ棟とリビングキッチンを中心としたワンルームの住居棟、離れの水場棟が敷地形状にあわせ少しクランクした形で配置されている。ガレージ棟は車を愛する施主(ピカピカに磨いて大事に乗るのでなく、油まみれになりながら自分でチューンしながら乗るというタイプ)にとって住いの心臓部でもある。2台がゆったり駐車できるスペースの上一部はロフトになっている。車のメンテ用リフトが据えられている部分上部は、機能上修理工場さながらの2層吹き抜けとなっている。

住居部分は、水場棟以外は寝室と広めのLDKの2室が比較的オープンにつながるワンルームとなっている。全面に床暖房を配し(シンダーコンクリート内打ち込み)ココヤシ麻のタイルカーペット敷きとした。

 

「将来の子ども部屋は?」という質問を、施主も私も各方面から質問を受ける。打ち合わせを重ねた結果、現時点では棚上げとなっている。限られた予算のかなりの部分がガレージに化けてしまった。隣接住居に住む施主のご両親は、十分過ぎるスペースと仕様で作られたガレージを見て「いざとなれば少し手を加えることで何とでも子ども部屋に改装可能。」と理解している。これは私のひとつの回答でもある。が、施主ご本人は「自分の城を何人(なんぴと)たれども明け渡すつもりはコレッポッチもない!」様子である。私は状況によっていくつかのメニューを準備しなければならない。

 

住宅に要求される将来起こり得ることを事前にシュミレーションし、形にすることも重要なことかもしれない。しかしながら、限られた条件の中で今現在のライフスタイルのイメージを最大限膨らませ、生き生きとした日常を過ごす為の住宅づくりが求められているともいえる。それぞれの未来は豊かな今に支えられてこそ輝きを増す。仮想の暮らしや、仮想の未来を追いかけ、プロトタイプを目指した住宅建設は最後まで実体を持たない。

 

「将来起こりうる問題も、うれしい悲鳴ならいくらでも受けて起とう。」という施主の覚悟がこの住いに緩やかな豊かさと透明感を与えている。拍手!

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